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This is a summary of the transcription: The speaker talks about a play called "Orlando" based on a novel by Virginia Woolf. The play follows the story of Orlando, a young nobleman who wakes up one day as a woman and lives for 360 years without aging. The speaker compares the performances of two actors who played Orlando and discusses the themes of gender and generational gaps in the story. They also mention Virginia Woolf's influence and recommend her book "A Room of One's Own." The speaker then recommends a short story collection called "Tsumi Demic" by Ichihomi Mitsuhiko, which recently won the Naoki Prize. They discuss the suspense elements in the stories and compare the writing style to Patricia Highsmith's suspense novels. The speaker shares their favorite story from the collection, "Romance," and recommends Highsmith's works as well. They emphasize the importance of engaging openings in suspense novels. The speaker concludes by wishing everyone a safe and enjoyable summer 第179夜を迎えました。今夜も新コーナー来ると思います。からスタートします。 先日宮沢李恵さん主演のオーランドというお芝居を見てきました。 今日はそんなオーランドという物語と、原作者であるバージニアウルフについて最初にちょこっとご紹介したいと思います。 オーランドのですね、私は割と初日に近いタイミングで埼玉芸術劇場で見たんですけれども、その後渋谷パルコであって兵庫、名古屋、福岡などもこれから回られるということなんで、あまりネタバレしないようにしゃべりたいと思います。 オーランドはどんなお話かというと、イギリスの女流作家であるバージニアウルフが1928年に発表した長編小説オーランドを原作にしたお芝居でして、物語の始まりは16世紀末、エリザベス・チョーイングランドを舞台にしています。 宮沢李恵さんが演じるのは主人公のオーランドですね。彼は彼はってつまり男性なんですね。美容と才能に恵まれてエリザベス女王の長愛を受けている若き貴族、つまりは超美少年の貴公子って感じの役を宮沢李恵さんがやったわけなんですけれども、すごくお似合いでしたね。 だいぶ前にその同じくオーランド役を田辺美加子さんがやってらしたバージョンを見た記憶があるんですけれども、田辺さんの方が強さがあって、宮沢さんの方がむしろやんちゃな少年って感じがしましたかね。 どちらも少女漫画から飛び出してきたようなと言いますか、王子様ルックと相まってガラスの画面とキャンディーキャンディーを一色多にしたような岩幅感でした。そんなオーランドはある日目覚めると突然女の人になっちゃうんですね。 そこから30歳からかな、歳をとらないまま360年もなんと生きなきゃいけないことになるというファンタジー大河ドラマという感じの壮大な物語なんですね。 今まで男性として生きてきて長愛を受けてきた、そしてモテてきたオーランドは女性の体になってしまい、女性として扱われる自分とそのギャップに戸惑いつつも意外と早く受け入れていて、男性の時には気づかなかったことに気づいたり不合理に生き延ったりというかなり現代的なお話でもあります。 それが決して女になって悪いことばかりじゃないというふうに描かれているのもとても良いなと思いましたし、ジェンダーギャップの話だけじゃなくて360年も時代を駆け抜けるので、ジェンネレーションギャップといいますか、時代ごとの価値観もギャップにぶち当たらせるというね、それを1928年に描いたバージニアウルフがすごいなと思いましたけども、 こういうテーマ設定にしようって思いつくことはできるかもしれないけれど、それを描ききる必要がすごいですね。バージニアウルフって名前がすでにかっこいいですもんね。声に出したくなる名前ですよね。 バージニアウルフにすごく影響を受けましたとか面接で言ってみたいですもんね。そんなバージニアウルフは自分一人の部屋というエッセイ本も出してまして、これはつまり女の人も自分一人の部屋を持つべきだっていう話なんですけれども、そのあたりも進んでますよね。 今のNHKの朝ドラの虎に翼にも通ずるような話だなと思いました。というわけで今日のクルーと思いますが、バージニアウルフとオーランドでした。気になった方はバージニアウルフもぜひチェックしてみてください。 さて本日のお便りに参りたいと思います。ペンネームローズムーンさんから頂きました。 今夜中の読書会を聞いて読みたいなと思う本が増えるばかりです。でも本を読む時間がなかなか取れていません。本屋さんや図書館に行く時間もないのが正直なところです。 そしてまた子供たちが夏休みに突入、毎日朝昼晩とこんだけを考え、部活の練習着の選択をしという毎日かと思うと、充実したお仕事についていらっしゃり、読書の時間もあるバタヤンさんを羨ましく思ってしまう自分もいます。 ヒットするようなことを言ってしまってすいません。短い時間でも何かちょっと現実逃避したい気分なのかもしれません。そんな私におすすめの本があれば教えてください。と頂きました。ありがとうございます。 そうですよね。そっか先週ぐらいから夏休みでしょうか。長くそして暑い夏休みですね。毎日そうめんとわけにいかないですもんね。 さて今日の勝手に貸し出しカードは、このたび直木賞を受賞されたイチホミチさんのツミデミックをフォーズムーンさんにお貸し出ししたいと思います。 このツミデミックはですね短編集なんですね。なのでこま切れに読書の時間を取るような場合でも集中できないよっていう方にもおすすめかなと思って選びました。 ツミデミックのネーミングはおそらく罪とパンデミックの掛け合わせかと思います。 コロナ禍設定としてはコロナ禍パンデミックをきっかけにそれぞれ登場人物が抱えていた問題とか過去の問題とかが漏れてしてという身近なお話ではあるのですごく頭を切り替えなくてもスッと入っていけるという意味で選びました。 ツミデミックには6つの短編が収録されています。それぞれどんなお話かそして中でも私のお気に入りの1編をご紹介していきたいと思います。 ツミデミックに収録されている6編は、まず居酒屋の客引きのアルバイトをしている男の子が過去のある出来事を突きつけられるという話、 違う鳥の羽、そしてイケメン配達員に当たることを期待してフードデリバリーにはまってしまった奥さんが主人公のロマンス、 友人と教師に死んだ少女が甦えて生きてくるというお話、 隣交した心を持って独り身の老人に近づくちょっとほっこり心温まるお話でしょうか、特別援護者、 それから娘の妊娠をきっかけに自分や隣人の過去の秘密が明らかになる祝福の歌、 そして知り合いではない複数人が集ってドライブをすることになるこの人たちは実は同じ目的を持って集まっているんですけれども、 というお話サザナミドライブという6編になっています。 私が一番好きなのは2番目のロマンスという小説です。 そしてローズムーンさんにもぜひ読んでもらいたいなと思ったのがこのロマンスなんです。 いずれもですね、サスペンス小説と言えると思うんですけれども、 ロマンスは特に私の好きなサスペンスショートショートのタイプなんですね。 ちょっとあんまり言ってしまうとネタバレになってしまうので、 もし直木賞受賞作ですし、この後読んでみたいなと思っていらっしゃる方は、 ネタバレをあまり聞かずに読みたいなと思っている方は一旦ここで止めていただいて読んでから、 ぜひまた聞いてもらえたらなと思うんですけれども、 言ってしまうと私が好きなサスペンスのタイプの一つとして、 これはいわゆる信用できない語り手というタイプなんじゃないかと思うんですね。 このロマンスの主人公はユリーさんという女性で、4歳の子供がいるお母さんなんですが、 今は仕事を探しているところですけれども、コロナ禍でなかなか見つからず、 旦那さんは美容室で働いてますが、ちょっとお客さんが減ってしまって、 いろいろうまくいっていないので、イラついているという状況なんですね。 ある日ユリはフードデリバリーの配達員、Uber Eatsみたいなものだと思うんですけど、 めちゃくちゃかっこいい配達員を見つけて、 あの人が来るといいなってフードデリバリーを頼むようになって、 でも誰が来るかわからないから、配達員は指名できない仕様になっているのかな、そのアプリが。 ガチャみたいなもので、次こそは、次こそはって頼むようになって、 だんだん深みにはまっていくという話なんですね。 途中まではすごく同情するというか、わかるなーっていう、 コロナの頃はいろんなことが制約されていましたし、 そのくらいの楽しみでもないとやっていけないよねっていう感じで読み進めていくんですけれども、 ちょっと途中からムムムムと思うところが出てきて、 これが信用できない語り手だったのかとなるんですね。 これすごくよくできた小説でして、 この主人公になんというかとても惹かれてしまう、振り回されてしまう私、 心情をちょっとうまく説明できないなと思ってたんですけど、 ちょうどパトリシア・ハイスミスさんのサスペンス小説の書き方という小説誌何本かありまして、 これもすごく面白い本なので、もしサスペンスとかミステリーがお好きな方はぜひ読んでみてください。 パトリシア・ハイスミスさんはですね、皆さんもご存知の見知らぬ乗客、ヒッチコックのやつですね、 アランドローンの映画、太陽がいっぱい、マットデーモンのバージョンでいうとリプリーの原作を書いた小説家の方ですね。 あと私が好きなのはケイト・ブランシェットで映画化されたキャロルもパトリシア・ハイスミスです。 彼女の書いているサスペンス小説の書き方という本に、まさにこの次デミックを紹介するにふさわしい、 ちょっと言い当てているなと思ったところがあったのでご紹介したいと思います。 ハイスミスはですね、あらゆる優れた物語にはサスペンスがあると言っています。 何かの嘘をついているとか、秘密があるとか、ある種の暴力性とか、何らかのアクション、 そしてそれが時に死の可能性さえも漂わせているというのがサスペンスですね。 次デミックの6編はいずれもサスペンス要素があるとも言えます。 ハイスミスはこの本の中で主人公の書き方、主人公の設定の仕方、キャラクター設定の仕方について詳しく解説しています。 例えば太陽がいっぱいのリプリーのように、主人公が罪を犯す側のパターンがありますよね。 フォームズとかポアロみたいに主人公が解決する側の小説もたくさんあるんですけれども、 そうだとしても、いずれにしても犯罪者側が魅力的である必要があると。 ハイスミスはこれを感じのいい犯罪者と言っています。 面白い、いいネーミングだなと思うんですけど、犯罪者にはなるべく好ましい要素があった方がいいと言っているんですね。 100%病んでいるけど魅力的ということもできなくはないけれども、 必ずしも同一性というか共感とかそういうことを求める必要はないけれども、 主人公になるべく良い性質を与えることをお勧めしますと書いてありまして、 賢いとか見た目がいいとか一部の人にはすごく優しい人であるとかね、家族思いであるとか、 その方が罪とのコントラストが生まれて物語が面白くなると、なるほどねと思いましたね。 ケルジ・コロンボとか古畑忍三郎の話をたびたびしてますけど、 あれもどちらかというと、犯罪者側の魅力で持たせている部分がありますよね。 そのため、ハイスミスは主人公が気取りすぎていないかとか、 屈強すぎたりユーモラスすぎたりしていないかというのを非常に気を付けているとも書いてありました。 戻って市穂道さんの罪デミックのロマンスに出てくるユリさんは、 感じのいい犯罪者でありながら信用できない語り手でもあるっていうのが私の解釈です。 それ以外も罪デミックに出てくる罪を犯す人たちは、それぞれに感じがいい主人公なんじゃないかなという気がしました。 そしてパトリシア・ハイスミスはもう一つ、タイムペンのサスペンス小説において大事なこととして、 書き出し、最初のページが大事だと言っています。 ハイスミスが好むのは、情景描写が続くような冒頭じゃなくて、 何らかアクションを生み出してくれる動きのある書き出しがいいと思っているというふうに書いてありました。 太陽がいっぱいって言うと、ちょっと読みますね、冒頭がどんな感じになっているか。 トムは背後をちらりと見て、男がグリーンケージから出て浮かってくるのを確認した。 トムは歩く速度を上げた。男が追いかけてきていることは疑いようがなかった。 というのが最初の文章の書き出しなんですけれども、 つまり主人公が何かを追われている、あるいは見つかりたくないという状況にあるんだな、 そういう人なんだなということがわかります。緊張感のある書き出しですよね。 今日の紙フレーズは市保光さんの罪でみっくのロマンスの書き出しがどうなっているか、ちょっと読んで終わりたいと思います。 目の前の曲がり角から小さな人影がピュッと飛び出してきて、 ユリは反射的にさよみの手をぎゅっと握る。男の子だった。 おそらく走ることを覚えたばかりで、体のサイズに吊り合わないエネルギーを持て余している。 頼りない足取りで失踪したかったに違いないが、背中のリュックから伸びた紐にあえなく阻止された。 男の子が飛び出してきたというアクションから始まる、動きのある描写から始まりますね。 その男の子を引っ張った紐はハーネス、子供用のハーネスだと思うんですけどね。 そこから主人公は家に帰って、夫に子供のハーネスどう思うという話をするシーンに繋がっていくんですね。 賛成か反対かみたいなハーネスについて議論をしたかったわけじゃなくて、 夫婦のグルーミング的な会話としてたわいない会話をしたかっただけなのに、 夫の側はないわーって全否定で、子供ってすぐに大きくなるしなーみたいなでっかい一般論にされたことで、 そういう話をしたかったんじゃないのになーってユリががっかりするというシーンに繋がっていくんですよ。 この短い中に夫婦の関係性が普通の会話、たわいない会話も弾まない、ずれている感じになっているってこととか、 ユリの性格的なところがぎゅっと凝縮されていて、非常に引き込まれる冒頭文だなと思いました。 この後にですね、シャワーを浴びているときに洗い物をするとシャワーのお湯の出が、 勢いが悪くなるから後にしてくれみたいなことを夫に言われるシーンがあって、 いやこれローズムーンさんとか言われたらキレていい案件だと思うんですけど、 だったら自分が洗ってからシャワーを浴びればいいのにね。 でもそういうことって本当ありますよねっていう感じで、 ユリさんにね、かっこいい配達員の人が来るなーと思って、 Uber Eatsを頼んだり、毎日料理を作るのも大変なので、 時々はUber Eatsを頼んだりしたって別にいいじゃんっていう気持ちにどんどんなっていくんですけど、 そこからがちょっと思いがけない展開になっていくので、ぜひ楽しんでみてください。 あ、合わせてパトレッシア・ハイスミスの作品も、もしよかったらお読みいただけたら嬉しいです。 リクエストありがとうございました。 暑い夏休み、皆さんも体に気をつけてお過ごしください。